社会人から理学療法士を目指すには
働きながら国家資格を取得する方法と注意点を解説

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社会人から理学療法士を目指すイメージ

執筆者
医学アカデミー学科長 土屋 稔(理学療法士)

「人の役に立つ仕事がしたい」「専門的なスキルを身につけてキャリアチェンジしたい」という思いから、理学療法士を目指す社会人の方が増えています。しかし、「働きながら資格取得は可能なの?」「学費はどれくらいかかるの?」「年齢的に不利にならない?」といった不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、社会人の方が理学療法士になるための具体的なステップ、仕事と学業の両立のポイント、学費や奨学金制度、そして気になる年齢や就職についても詳しく解説します。

社会人からでも理学療法士になることは可能

結論から言うと、社会人からでも理学療法士を目指すことは十分に可能です。実際に、多くの社会人経験者が理学療法士として活躍しています。

  • 年齢制限なし
    理学療法士の養成校への入学や国家試験の受験に年齢制限はありません。
  • 多様なバックグラウンドが強みに
    社会人経験で培ったコミュニケーション能力や問題解決能力は、医療現場で大いに役立ちます。むしろ、一度社会人を経験していることが、学習意欲の向上や人間的な成熟につながることもあります。
  • 高まる需要
    高齢化社会の進展に伴い、リハビリテーションの専門家である理学療法士のニーズは高まっています。また職域の拡大により、病院や介護、福祉施設以外にもスポーツチームのメディカル部門、一般企業の健康領域などで活躍する方も増えていきます。

国が指定する養成校での学習と国家資格の取得が必要

理学療法士になるためには、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定する養成校(大学、短期大学、専門学校)で3年以上学び、必要な知識と技術を習得した後、理学療法士国家試験に合格する必要があります。

社会人から理学療法士になるための具体的なステップ

社会人から理学療法士を目指すイメージ

社会人の方が理学療法士を目指すための一般的なステップは以下の通りです。

  1. 養成校の受験・入学
  2. 臨床実習の実施
  3. 国家試験の受験

理学療法士の養成校への受験・入学

まずは理学療法士の養成校への入学が必要です。入試科目は学校によって異なりますが、一般的には国語、英語、数学、生物などの筆記試験や面接、小論文などが課されます。社会人入試制度を設けている学校もあるため、事前に学校説明会や募集要項の請求にて確認しましょう。

養成校での学習と臨床実習

養成校では、解剖学、生理学、運動学といった基礎医学や、理学療法評価学、運動療法学、物理療法学などの専門知識・技術を学びます。

最も重要な課程の一つが臨床実習です。実際に病院や施設へ行き、指導者の下で患者様と接しながら実践的なスキルを磨きます。この臨床実習は日中に行われるため、夜間課程の学生であっても実習期間中は仕事を調整する必要があります。

理学療法士国家試験の受験と合格

養成校のカリキュラムを全て修了すると、国家試験の受験資格が得られます。国家試験は年に1回、通常2月下旬頃に実施されます。 近年の合格率は概ね80%〜90%前後で推移しており、養成校での学習をしっかりとこなせば、十分に合格を目指せる試験です。

注意点:通信教育だけでは理学療法士にはなれない

「働きながら学びたい」と考える社会人の方の中には、通信教育での資格取得を検討する方もいるかもしれません。しかし、理学療法士の国家資格は通信教育のみで取得することはできません。 必ず指定された養成校に通学し、座学だけでなく実技や臨床実習を履修する必要があります。

働きながら理学療法士を目指すには夜間課程への入学がおすすめ

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多くの社会人にとって、現在の仕事を続けながら理学療法士を目指せる夜間課程(夜間コース)のある専門学校や大学は非常に魅力的な選択肢です。

夜間課程へ入学するメリット

  • 仕事を続けながら学べる
  • 学費が比較的安いケースが多い
  • 同じ目標を持つ仲間と出会える

日中は仕事に専念し、平日の夜間や土曜日に授業が行われるため、収入を得ながら学習を進められます。また、夜間課程は昼間課程に比べて学費が抑えられていることが多いです。

同じように社会人から理学療法士を目指す仲間も多いため、モチベーションも維持しやすいでしょう。

夜間課程のデメリット・注意点

  • 体力的な負担
  • 学習時間の確保
  • 臨床実習期間の調整

仕事と学業の両立は、想像以上に体力と精神力が必要です。自己管理能力が問われます。限られた時間の中で効率的に学習を進める工夫が必要です。

最終学年などで行われる臨床実習は日中に行われるため、その期間は仕事を休むか、大幅に調整する必要があります。

医学アカデミーのような専門学校では、講義の補習や、社会人学生向けのキャリアサポート、グループ施設や近隣病院を活用したリハビリ助手としての求人紹介など、働きながら学ぶ社会人をサポートする体制を整えている場合があります。

社会人から理学療法士を目指す際の学費と経済的支援について

理学療法士になるためには、決して安くない学費が必要です。一方で経済的な支援プログラムを用意している学校もあるため、サポートを受けられる可能性もあります。

学費の目安

養成校の種類や地域によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

  • 私立大学(4年制)
    年間約124万円、総額で約523万円(入学金含む)
  • 専門学校(昼間課程・4年制)
    年間約120万円、総額で約514万円(入学金含む)
  • 専門学校(夜間課程・4年制)
    年間約95万円、総額で約411万円(入学金含む)

この他に、教科書代(20~40万円程度)、実習着代、実習関連費用(交通費、宿泊費など)が別途必要になる場合があります。

医学アカデミーは3年制の養成校です。昼間課程で総額419万5千円、夜間課程で総額335万5千円となります(どちらも入学金込み)。交通費と宿泊費は医学アカデミーが負担するため、別途徴収はありません。また、分割納入制度もあるため、入学前に卒業までの全学費を蓄えている必要はありません。

社会人が活用できる経済的支援制度

学費の負担を軽減するために、以下のような制度を活用できる場合があります。

奨学金制度 日本学生支援機構の奨学金や、地方自治体、各養成校が独自に設けている奨学金制度
教育ローン 国や民間の金融機関が提供する教育ローン

参考:厚生労働省「教育訓練給付金」

医学アカデミーでも、奨学金制度や学費サポート制度を用意しています。また、全国にある病院奨学金についてもご紹介いたします。学費の支援についてお気軽にご相談ください。

社会人から理学療法士を目指す人によくある質問

何歳まで理学療法士になれる?

前述の通り、理学療法士になるのに年齢制限はありません。 実際に30代、40代、あるいはそれ以上の年齢で理学療法士としてのキャリアをスタートさせる方もいます。日本理学療法士協会の統計(2024年3月末 現在)によると、平均年齢は男性で36.1歳、女性で35.1歳ですが、40代・50代の方も多く活躍しており、60歳以上の方もいます。

参考:公益社団法人 日本理学療法士協会「統計情報」

社会人経験者の就職は不利?

むしろ、社会人経験は就職において強みとなることが多いです。

  • コミュニケーション能力
    様々な年代の患者様や多職種の医療スタッフと円滑なコミュニケーションを取る能力は、社会人経験で磨かれます。
  • ビジネスマナー
    基本的なビジネスマナーが身についていることは、即戦力として期待されます。
  • ストレス耐性や問題解決能力
    困難な状況を乗り越えてきた経験は、医療現場でも活かされます。

ただし、年齢が上がるにつれて、体力的な側面やライフプランとの兼ね合いも考慮する必要が出てくるかもしれません。急性期病院や大規模病院への就職が難しい場合でも、クリニック、介護老人保健施設、訪問リハビリテーションなど、活躍の場は多様にあります。

まとめ|社会人からでも理学療法士を目指せる

社会人から理学療法士を目指すイメージ

社会人から理学療法士を目指すことは、決して簡単な道のりではありません。しかし、適切な準備、そして周囲のサポートがあれば、必ず道は開けます

本記事で解説したように、働きながら学べる夜間課程の活用、学費支援制度の利用など、社会人の方が理学療法士になるための選択肢はさまざまです。そして、あなたの社会人経験は、理学療法士として活躍するための大きな財産となるでしょう。

医学アカデミーでは、社会人の方が安心して理学療法士を目指せるよう、きめ細やかなサポート体制を整えています。 個別相談も随時受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

医療×スポーツ。医療・スポーツ分野で活躍できることを目指します。附属病院・施設あり、キネシオテーピング認定の理学療法士養成校。48年の歴史。医学アカデミーグループは多くの医療人を輩出しています。